火災の燃焼において、燃焼を阻害する働きのある物質が多く存在します。
例えば、空気中の窒素や二酸化炭素。
燃焼に深く関係しているのは、酸素であって、窒素や二酸化炭素ではないということは、前回確認しましたよね。

では、これらの物質は燃焼に対してどのような働きをしているのでしょうか。
ちなみに今回のメインテーマであるサーマルバラストは、これらの物質のことも含みます。
サーマルバラストをもう少し詳しく見ていきましょう。
熱エネルギーを奪い燃焼を阻害する『サーマルバラスト』とは
燃焼に関与しない物質が、酸素と可燃性ガスの燃焼によって生じる熱エネルギーを奪い、熱平衡状態に移行しようと燃焼を阻害すること。
つまり、火災の燃焼に関係のない物質が、燃焼をジャマして熱平衡状態を保つこと!
これをサーマルバラストと言います。
燃焼する際に、酸素と可燃性ガスが熱エネルギーを生み出したのにもかかわらず、
燃焼に関係のない窒素や二酸化炭素などが、熱エネルギーを奪ってしまうのです。
そのため、周囲の物質が熱平衡状態を保とうとするため、燃焼が阻害され、効率よく燃焼できなくなるというわけです。
サーマルバラストが起きても火災の燃焼ができる状態とは


火災の燃焼でサーマルバラストが起こることで、燃焼が阻害されますが、
では、なぜ住宅火災などはあんなにもボーボーと燃え上がっているのでしょうか。
その理由は、物質が燃焼範囲に入っているからだと言えます。
燃焼範囲に入った物質は、いくらサーマルバラストが起ころうとも、
それ以上に燃焼が激しいため、全く関係ありません。
では、逆にサーマルバラストが起こることで、燃焼できない状態とは、いつなのでしょうか。
それは、燃焼範囲がLEL(爆発下限界)未満や、UEL(燃焼上限界)以上の状態です。
燃焼範囲に入っておらず、燃焼できない時は、サーマルバラストによって、熱平衡状態が保たれている可能性が考えられます。
燃焼範囲ってなに?LELやUELって?という方は、こちらの記事を参考にしてみてください。



燃焼範囲ごとに見るサーマルバラストの特徴
では、燃焼範囲ごとにサーマルバラストはどのように変化していくのでしょうか。
①爆発下限界(LEL)未満
➡️まさに、サーマルバラストが多く存在している状態。
発熱反応の連鎖ができず、燃焼していない。
②爆発下限界(LEL)ちょうど
➡️サーマルバラストがジャマして、発熱を拡散できない状態。拡散できないが、発熱の連鎖はしているので、徐々に大きくなっていく。
③燃焼中のとき
➡️発熱を拡散することはできないが、発熱の連鎖がよりスピーディーになる。サーマルバラストが存在するが、発熱の連鎖が早いため、燃焼できる。
④爆発上限界(UEL)に到達
➡️サーマルバラストが減少。燃料が多すぎて余っている状態。
酸素が余っているので、酸素自体がサーマルバラストになる。
そのため、連鎖反応が起こりづらく、燃焼が継続しなくなってくる。
⑤ 爆発上限界(UEL)を超えている
➡️サーマルバラストは④よりさらに少ない。
余っている燃料自体がサーマルバラストとなるので、連鎖反応が起こらない。
⑤のときに、一気に酸素が取り込まれると連鎖反応が爆発的に大きくなります。
これがバックドラフトです。
まとめ


いかがでしたか。
サーマルバラストは燃焼範囲によって変化していきます。
燃焼を阻害するサーマルバラスト。
いま、燃焼範囲に入っているのか、サーマルバラストはどのような状態になっているのか、
これらを把握することで、燃焼について理解が深まるのではないでしょうか。